建築における室礼の考え方
日本において「室礼(しつらい)」とは、季節が移ろうのを愛でたり、自然や命に感謝をするために様々な行事を通じて家族や訪れた人たちとわかちあうための工夫のことを指していました。
現在は、少し違った意味で室礼と捉えることが多くなりましたが、住まいも同様、夏や冬など季節ごと適切な室礼を行うことにより、さらに快適な住まいを実現することができると考えています。私たち建築家からみる「室礼」について少しお話したいと思います。
室礼は創り手と住まい手の共同作業
年中行事というと、何を思い浮かべますか?
子供の行事だったり百貨店などで行われる催事など、1年を通じて四季を感じる機会は意外とたくさんあります。
ですが、多くの方はそういった季節の行事などに込められた意味や目的まで考えることは、案外少ないのではないでしょうか。
日本には美しい四季があります。
私たち建築家にとって、日本の四季は切っても切ることができません。
なぜなら、心地よく快適に住んでもらうためには重要なことだからです。
快適な住まいを実現させるために大切なのが、南を基本として深い軒をつくり強い日差しを遮ること、そこに最善を尽くし細心の注意を払うこと。これは私が住宅を建てる上で重要だと考えていることのひとつです。
ただ、私たち建築家が全力を尽くすのはもちろんですが、住まい手となる施主様自身にも少し手を加えて頂くことで、さらに住みよい快適な空間を作ることが可能だと考えています。
たとえば、すだれやよしずなどのアイテムは手頃な価格で購入できるうえに、強い日差しを遮るのに大変効果的です。これらを上手に取り入れることで、部屋の温度が上昇してしまうことを抑えるだけでなく、視覚的にも涼しい印象を与えることができます。
快適な住まいは「夏涼しく冬暖かい」
住みよい我が家を実現するためには、私たち建築家は建物や敷地に合わせた開口、風の通り道、断熱性の向上などに十分に配慮する必要がありますが、住まい手の室礼があってさらに効果を発揮すると考えています。
冬にはすだれを巻き上げ日差しを部屋に取り入れて暖をとり、夏に開けっぱなしにしていた建具を閉じ小さな空間をつくる。
私は個人的に、このようなふるまいは一番最初に季節の変わり目を感じられることなのではないかと思っています。
最近は昔のように、春や秋をしっかりと感じられなくなってきているように思います。
特に今年の夏は日本各地で30℃を超える真夏日が多く、兵庫県富岡市では35℃を超える日が連続で22日もありました。
私たちは施主様の想いや願いを「住居」に込め、快適な住まいとなるよう精一杯の力を出すと同時に、住まい手となる施主様に少しだけ手間をかけ室礼を行って頂くことで、より快適に心地よい住まいづくりをすることが使命だと考えています。
昔とは室礼の形は少し変わってきましたが、室礼は日本人が持つ伝統行事の一つであり、後世に残すべきふるまいのひとつです。
そのお手伝いを少しでも“ツナグの家”ができれば、これ以上幸せなことはありません。